会社経営の基本戦略【STP分析】
企業経営、商品開発に差し当たっては、まずはじめに自社が戦うべき市場を見極めなければなりません。
しかし市場は通常とても広く、すべての市場ニーズに応えることは困難です。
またサービス・商材によっては、特定の市場での得手不得手もあります。
そのため本来自社サービスの置くべき市場とは異なる市場で勝負してしまったがために、「全く売れない!」という課題に直面し、さらには「商品が悪い!営業が悪い!」と要因を履き違えてしまい、本質的な問題に気づけないケースが存在します。
果たして現在戦っている市場は、貴社のサービスに合致している市場でしょうか。
そんな時にオススメのマーケティング理論が、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの三要素からなる「STP分析」です。
【STP分析】
セグメンテーション・・・市場を細かく分けて見る
ターゲティング・・・特定の市場に狙いを絞る
ポジショニング・・・その市場で他との違いを際立たせる立ち位置を決める
これらの三要素の頭文字を取って「STP分析」と言います。
この手法を用いると、効果的に市場を開拓することが可能になるというわけですね。
今回はそんな各三要素をより深堀りして解説していきますので、どうぞお付き合いくださいませ。
因みにSTPを提唱したのもマーケティングの神様と称されるコトラー先生。
以前の記事でも少し触れましたが、メジャーなマーケティング理論の多くに関わっている気がします。
さすが近代マーケティングの父。
S・・・セグメンテーション
セグメンテーション(Segmentation):市場を細分化して見る
まずは1つ目の要素であるセグメンテーションを見てみましょう。
具体的な細分化には様々な条件がありますが、大きく分けて4つの要素で考えてみると良いでしょう。
■地理
∟地域、人口、人口密度、気候帯など
■デモグラフィックス(人口統計学)
∟年齢、性別、職業、所得、世帯数、社会階層、既婚未婚など
■行動
∟ベネフィット、使用頻度・量、ロイヤルティなど
■サイコグラフィックス(直訳「心理学的」)
※数字や分類で表現しづらい要素
∟ライフスタイル、パーソナリティ(個性)、価値観、好み、信念
このように様々な要素で市場を区分けし、幅広く消費者行動全般を細分化の条件にします。
その上で次のステップであるターゲティングにより、狙いを定めていきます。
T・・・ターゲティング
ターゲティング(Targeting):標的市場を選択する
セグメンテーションができたら、どのセグメントが有利か評価し、標的(ターゲット)を絞ります。
これがSTP分析の第2ステップとなるターゲティングです。
そしてターゲットを絞る際には、2つの要素に注意します。
1つ目はセグメントが持つ魅力。
もう1つは売り手側の経営目的と経営資源(ヒト、モノ、カネなど)です。
企業の経営目的に合わないとそのセグメントには進出できません。
また企業が持つ経営資源が足りなくて進出できないこともあります。
■セグメントが持つ魅力で絞る
∟セグメントの規模や成長性、収益性、経済性、リスクなどが魅力的か
■売り手側の経営目的と経営資源で絞る
∟そのセグメントへの進出が経営目的に合っているか、経営資源は充分か
こうして選択したセグメントを「標的市場」や「標的顧客」と呼びます。
極論ですが、一例として既存の後期高齢者のみをセグメントした場合は市場の縮小リスクが伴い、巨額の設備投資が必要なセグメントはスタートアップでは適してないですよね。
このように2つの要素に意識を置いて標的市場や標的顧客を絞り込んでいきます。
そして標的市場の選択には以下の5つのパターンがあります。
自社のサービスがどのパターンに当てはまるか検証し、さらに次のステップで立ち位置を明確化しましょう。
①単一セグメント集中
文字通り1つのセグメントに集中して1つの商品やサービスを投入するパターンです。
小規模企業でも大企業と渡り合える数少ない戦略ですが、そのセグメントに大きな変化があると全滅の可能性もあります。
しかし経営資源等を鑑みると、開業当初の小規模企業においては取らざるを得ないパターンの一つではないでしょうか。
②選択的専門化
経営資源に余裕がある場合、複数のセグメントを選択するのも一つの手です。
例えセグメントの相互連携が無くとも、魅力的なセグメントなら実現可能です。
それぞれのセグメントで収益が上がれば良いのです。
まさにリスクヘッジ。
③製品専門化
投入するサービス・商材が魅力的なものなら、それに関連するいくつかのセグメントを狙うパターンを選択できます。
ただし関連する市場なので、他社が画期的なサービスを投入するようなことがあると大きなダメージを受けるリスクは内包します。
参入前の競合分析の必要性が高まります。
④市場専門化
製品専門化とは逆に、市場の方に強みを持っている場合は関連する複数のサービス・商材を投入するパターンが選択できます。
リスクとしては市場自体の縮小が挙げられます。
ゼンショーホールディングスが「すき家」以外にも同市場において「なか卵」「COCO’S」を運営しているようなイメージです。
⑤フルカバレッジ
全てのセグメントに数多くの商品やサービスを投入するのが市場の「フルカバレッジ」パターン。
小規模、中小企業では中々にして選択は困難です。
経営資源の豊富な大企業の特権です。
P・・・ポジショニング
ポジショニング(Positioning):標的市場でのポジションを明確にする
ターゲティングに続いて、標的と狙った顧客の頭の中に特定のポジションを定めることを「ポジショニング」と言います。
つまり顧客が他社のサービス・商材と比較したときに、自社のサービスをどう見られたいか、それを決めることです。
ポジショニングのポイントは「他社のサービスや商品と比べた時」と考えることです。
「競合優位性」とも言えるでしょう。
これが明確でない場合、標的顧客は「特に特徴の無い新規参入企業の商品」を選ぶことはまず無いでしょう。
しかしこれが明確にポジショニングできていた場合は、「この企業の商品は他社と違って○○だから欲しい」と、成約・購買の決め手になります。
このように他社サービスよりも優れている点(独自資源)を考える必要があります。
因みにこれを
KBF(Key Buying Factor):購買決定要因
∟商品やサービスの購入を決めるときにカギとなる要因
と呼び、ポジショニングはこのKBFを基準にして行われることが多いです。
またポジショニングを考える際によく使われるのが「ポジショニング・マップ」です。
ポジショニング・マップでは、標的顧客のKBFを徹底的に検討し、相関性の低い2つを選んで縦軸と横軸に設定します。
そこに自社サービスの位置付けに加え、他社競合サービスを配置することで、自社のポジションを可視化することができます。
それにより同じポジショニングを争う競合他社が無いかもチェックでき、もし競合する先行他社がある場合は標的顧客を変えるという選択もできるでしょう。
このようにして自社サービスの立ち位置を明確化していくわけですね。
定期的に自社の【STP】を見直しましょう
今回は企業が正しい市場で戦うための参考基準「STP分析」について解説しました。
マーケティング・営業活動を充分に行っているにも関わらず売上が伸び悩んでいる場合は、多面的に課題を紐解いていくことが重要となります。
「商品設計の見直し」「営業活動内容の精査」「販促手法の再検討」なども勿論大切な要素ではありますが、そちらに加えて「適切な市場の見直し」を是非実施していきたいものです。
また、様々な要因からなる情勢変化により市場が変動するケースも存在します。
そのため定期的なSTPの見直しはしておいて損は無いとも考えます。
早速明日から実践し、高精度のマーケティング戦略に基づく営業活動を実施していきましょう。