新型コロナウイルス第三波が猛威を振るい、今年はかつてないほど静かな年越しになると囁かれている近頃です。
改めて振り返ってみると、今年はビジネスにおいてこれまでの在り方が激変した一年となりました。
リモートワークやオンライン商談に電子契約、、あげてみると枚挙にいとまがありません。
これまでは当たり前であった対面での業務から、慣れない非対面業務を余儀なくされた会社も多いのではないでしょうか。
まさにニューノーマルな時代の幕開けだったと言えるでしょう。
そんな折、巷ではマネージャーや役職者からこんな声が囁かれております。
「そもそもうまくいかない部下の指導やマネジメントが、リモートワークになってさらに拍車がかかった」
なるほどなるほど。
まず「リモートワークになって」の部分は慣れの問題もるため、業務連絡方法やオンラインコミュニケーションを改善すれば何とでもなるものの、「そもそもうまくいかない部下の指導やマネジメント」は由々しき問題です。
今回は、そんな根源的な「マネジメント」について心理的現象と体験談を交えて解説していきます。
部下や後輩と良好な関係性は築けていますか?
まず「マネジメントがうまくできない」と考えている方は、下記に当てはまるケースが多いのではないでしょうか。
「部下が言うことを聞いてくれない」
「部下とうまくコミュニケーションが取れない」
「指摘すればするほど部下との関係が悪化してしまう」
「ある程度裁量を与えても思うような結果にならない」
などなど。
これらを端的に集約すると、ずばり部下と良好な関係性を築けていないことが最大の要因です。
もし自分が部下だったら、と考えた際に、自分をたいして理解もしておらず、指示や叱責だけ投げてくる上司の言うことを素直に聞きたいとは感じませんよね。
対面でも非対面でも勝手は同じく、根本的な要因はこの部分にあるケースが多いです。
うまくいかない原因は【ゴーレム効果】にあった
では最適解の前に、なぜ部下と良好な関係性を構築できないのか。
これは心理的現象でいうところの「ゴーレム効果」が大きな影響を与えています。
【ゴーレム効果】
ネガティブなメッセージをひとつかけられるだけで自信が消えてしまう現象。
「ゴーレム」はユダヤの伝説にでてくる土人形であり、額の護符の文字をひとつ消されただけで土に戻ってしまうことが由来。
つまり、上司に「あいつはダメな奴だ」という印象を持たれてしまうと、本当に成績が下がってしまうという現象です。
過度な指摘や叱責、または裁量を与えすぎることによる放置に近い状態により、部下は徐々に自信を失います。
それが結果になって表れてしまい、また追い打ちをかけるようにネガティブな指導を受けることにより、さらに悪循環にハマっていくわけです。
そして最終的に上司と部下の間に大きな溝が生まれ、取り返しのつかない険悪化した関係性が構築されてしまうのです。
最も望ましいマネジメントスキル【ピグマリオン効果】
では、部下と良好な関係性を築くにはどのようにすれば良いのか。
ゴーレム効果に対して効果的なものが「ピグマリオン効果」です。
【ピグマリオン効果】
上司や親などから期待をかけられると、それに応えようとして以前より仕事や学業に励み、実際に成績が向上する現象。
ピグマリオンとはギリシア神話の登場人物で、「自らが彫った理想の女性に恋をした結果、彫像は本物の女性になり彼と結婚した」という逸話に由来。
アメリカの心理学者ローゼンタール氏が提唱。
つまり簡潔にまとめると、部下に対して「期待している」ことを伝えれば、それが現実となるという意味です。
老若男女問わず、人間は自身の存在意義や必要性を認識することによって、物事に関心を示します。
そのためネガティブで誤ったマネジメント方法を取っていると、部下が自身の存在意義を認識できなくなってしまいます。
勿論業務上の重大なミス等は指摘せざるを得ませんが、なるべく「あなたには期待している」という接し方を意識し、部下の前向きなモチベーションを引き出してみましょう。
そうすれば自ずと部下の業務に対する関心が深まり、マネージャーや上司であるあなたの言葉に耳を傾けはじめるはずです。
【実例】凄腕人事部長の究極のマネジメント談
尊敬する知人の一人である、某大手保険会社の凄腕人事部長の体験談でもこのピグマリオン効果をうまく駆使した事例が見られました。
彼は中途入社のセールスマンを採用したものの、その中途社員は中々自分の殻を破れず部内でのコミュニケーションが薄く、そのため我流で成功体験のない営業スタイルを続けていたとのこと。
周りが協力しようとしても聞く耳を持たない姿勢と中々出ない成果に対し、周囲は頭を悩ませていたようです。
そこで彼が取った行動がまさにピグマリオン効果。
中途社員と二人の時間を度々作り、しきりに「あなたが他者の様々な成功体験を吸収して営業成績を挙げることを期待している」と伝え続けたそうです。
時には朝礼後のミーティングで士気を高めながら、時には個別で食事の機会を設定し腹を割って話しながら。
その結果、数カ月後には中途社員自ら「過去の成約事例を共有する会議」を社内企画するまでに至ったとのことでした。
「思考は現実化する」と言いますが、まさにピグマリオン効果を駆使したマネジメントスキルの賜物といえるでしょう。
なんやかんや言ってもコミュニケーションが大事
これらのことから、部下との接し方一つで成績に及ぼす影響は多大だということがご理解いただけたかと思います。
AIやRPAなどで何かと自動化が進んでいる現代ですが、それらを開発し、営業するにも人間同士のやり取りが必須であり、上司と部下という位置づけが存在する限りマネジメントスキルは最重要項目です。
ビジネスにおいてより良い成果を創出するためにも、この「ピグマリオン効果」を用いて円滑なマネジメントを実現していきたいものです。