政府の規制改革推進会議は22日、企業が在宅勤務やテレワークをする人材を評価する新たな手法を確立するよう提言した。
「雇用関係の規制や年功序列型賃金など従来型の雇用制度・慣行を見直すべきだ」と賃金・雇用体系の改革を促した。
日本経済新聞 第48236号
コロナ禍で余儀なくされた従来と大きく異なる多様な働き方・業務への取り組み、またそれにより従来の働き方の浮き彫りになった課題点などを踏まえて、政府がデジタル時代の人材評価制度にメスを入れる、という旨の記事が掲載されました。
規制改革推進会議の主要トピック
新型コロナウイルスの感染拡大から広がった各社のリモートワークへの取り組みを受け、高い専門性を持つ人材がサテライトオフィスやテレワークを活用した柔軟な働き方に取り組む例が全国で見られました。
それにより、必ずしも職場で勤務しない場合を想定した人事評価制度を確立すべきだ、というのが当該会議の論点です。
また記事には主にデジタル技術の専門人材について言及されておりますが、従来のように1つの会社にとどまるのではなく、機動性の高いフリーランスなどの働き方を推進する動きも見られました。
デジタル人材を中心に優秀なフリーランスは増加傾向
「【ランサーズ】フリーランス実態調査2020年版」によると
■フリーランス人口推移
2015年【913万人】 ⇒ 2020年【1,034万人】
■フリーランスの経済規模
2015年【14.3兆円】 ⇒ 2020年【17.1兆円】
このように、幅広い業種・職種でフリーランスの人口・経済規模共に上向きに推移していることが見て取れます。
実際に私も都内で活動していた際には、1週間の内平日5日の曜日ごとで5社のクライアント様の営業代行を行ったりと、1つの企業にとどまらない働き方を実践しておりました(厳密に言うとフリーランスではなかったですが)。
またその中の商材の1つであったフリーランスと求人企業様のマッチングプラットフォームの案件稼働時には、ご登録されているフリーランスの方々の経歴やスキルを拝見してあまりのレベルの高さに圧倒されたこともありました。
そのような近年の就労形態変化の背景、そして何よりコロナの影響も相まっての今回の政府の動きとして考えると、十二分に理に適っていると感じます。
労働規制という名の障壁
では実際に近々でこのような柔軟な働き方による評価制度は確立されるのか、というとそれにはいくつかの壁が存在することもまた事実です。
というのも現在の日本はいわゆる「時間管理型」という働き方が主軸であり、いわば労働時間=仕事量のためこれにより必然的に労働時間が長くなればなるほど評価される、それを踏まえた年功序列制度が取り入れられています。
これは遡ると1947年施行の労働基準法が日本の賃金制度の基礎となっているためです。
当時の時間と生産量が比例する製造業をモデルとして労働時間の上限を超えた場合は残業代を支払うという制度がベースになっているため、一朝一夕で抜本的な制度の改革は困難、というのが現状です。
既存の雇用ルールにとらわれない制度の導入が加速
現状日本の主軸労働制度となっている「時間管理型」ですが、これにとらわれない働き方として政府が導入を推進している労働形態をいくつかご紹介します。
ジョブ型雇用
企業が職務内容を明確にして成果で社員を処遇する制度
未だ成果より労働時間に重点を置く日本ならではの従来規制により十分に導入が進んでいないが、日立製作所や資生堂、富士通等が本格導入を決めた
高度プロフェッショナル
労働時間にかかわらず成果で社員を評価し企業は残業代の支払いも免除される
しかし対象職種の制限や対象年収水準の関係もあり、2019年4月の開始から114名のみの登録にとどまっている
更なる導入促進のためには対象の拡大が求められている制度
裁量労働
実働勤務時間ではなく、あらかじめ決めた時間を労働時間とみなし自分で仕事の進め方を決められる制度
ただ適用できる対象が限られており、導入拡大には至っていない現状
他にも「フレックスタイム」「事業場外みなし労働時間」などの制度はありますが、どちらも抜本的な労働制度の改革には繋がらないため、前述の制度をより活用しやすくなるよう対象の見直しが急務といった現状です。
今後の労働制度の在り方
既存ルールとの兼ね合いという大きな障壁もありますが、今回のコロナ禍による多様な働き方や評価制度の見直しなどを踏まえて、今後遠くない未来で日本もアメリカのように「成果を主軸に置いた」労働制度が確立することと思われます。
そうなるとこれまでの勤続年数や労働時間に対しての評価ではなく、「個人のスキルによる成果」という点が評価対象の焦点となり得るかと考えます。
私もサラリーマン時代、とある上司に「君がどんなに素晴らしい成績を上げても社歴を考えると僕より役職が上がることはないから、あと数十年で僕が引退するまで頑張って」と非常に直接的な表現で言及されたことが腹落ちしませんでしたが、このような世の中の動きで本来評価すべき個々の能力にフィーチャーされることを切に願います。
またその場合は個々の成果をどのように評価すべきか、という評価項目も非常に重要な指標になってくるかと考えます。
勿論業種・職種により評価項目は様々であり、当然一元化できるものではないため、弊社も強固な組織構築のために「適切に能力・成果を評価できる仕組みづくり」に早々に着手していく考えです。